生活習慣その2、欧米化した食習慣は糖尿病の敵
体重測定を欠かさない
日本人の食習慣は、戦後60年の間に大きく様変わりしました。糖質の摂取量は3割ほど減り、脂肪は約4倍になって、欧米人並みの食生活になりました。女性の場合、多くは太るほどのエネルギーはとっていません。ただ、エネルギーの中身は脂質が大きなウェイトを占めています。
隠れ肥満という言葉が一時期ブームのようにいわれましたが、見た目は太っていなくても脂肪がついている。それがいまの日本の多くの女性の姿です。日本人は欧米人に比べると、それほど太っていなくても糖尿病になりやすい。油断はできないのです。
肥満の原因は、非常に単純で体が使うエネルギーより口から入るエネルギーが多いから。つまりほとんどがエネルギー摂取過多(食べすぎ)です。これを是正しようと思っても容易なことではありません。食事量を減らすだけでなく、食事の内容も見直さなければならないからです。
また、運動だけでの肥満解消はなかなかむずかしい。アスリート並みに運動しないと、蓄積された脂肪は燃えません。仮に運動でやせることができても、太らないためには運動をずっと続けていかなくてはなりません。もちろん運動だけでなく食事制限も重要です。
しかし、本当に簡単な方法があります。毎日体重を計ること。それだけでやせたという人が、あとを絶ちません。
多くの人は、どうすれば体によいか、どうすれば体重が減るか、理屈はよくご存じです。「納得したら行動を始めます」そんな言葉をよく聞きますが、納得してもなかなか行動に移せないのが人間です。しかし、それでは何も変わりません。
理屈などわからなくても、実践するほうが大事で、さらに結果を伴います。そこで、ただひたすら体重を計って記録してみましょう。そこから見えてくるものがたくさんあります。食行動の問題点や生活上の癖を知って、自然にやせたり、健康になるコツがわかったりします。私は、患者さんの体重を計り続けることで、がんを見つけたり、自殺願望を察知したこともあります。
体重測定は、簡単ですが非常に有益な体の情報が得られるのです。思った以上に自分の情報が収集できます。
人間にとって、食べないことへの恐怖はとてつもないプレッシャーなのです。ところがこの女性も含めて、保健センターのスタッフが体重を計り始めると、机の上からお菓子や飴が消えました。
いったいどうしたのだろう?「おやつ食べないの? 」不思議に思い、女性に聞いてみました。女性は答えます。
そんなの食べたら、明日体重が増えちゃうから」びっくりしました。腹が減ると手が震えると言っていた女性が、出すのです。実際、今日の体重が昨日より600 g増えていたら、おやつはいかんと言いなかなかおやつには手が出ません。体重を計るだけで、いやでも体重は減っていくのです。
この女性スタッフたちは、理屈よりもまず行動を起こしたことで納得し、自然と理屈を理解しました。
いつ計るか?起床してトイレの後
毎日体重を計っている人に聞くと、夜のお風呂のあとに計っているという人が圧倒的に多いです。しかし残念ながら、夜体重を計るのはあまり得策とはいえません。夜の体重は、計る直前の飲食や当日の運動量が反映されやすいからです。
したがって、「言い訳がしやすい」という問題が起きてきます。少々体重が増えても、「あー今日は、食べすぎた」で終わってしまいます。そこには、何の反省も何の行動変化もありません。仮に少し反省があったにせよ、一晩眠ればケロッと忘れてしまいます。
これが朝計るようになると、話が違います。朝の体重は、前の日の食事、前の日の飲水、前の日の運動からいちばん遠い体重です。したがって言い訳ができません。
朝の体重は、1日のうちでいちばん軽い体重でもあります。どうせ計るなら、朝起きて排尿したあとです。この毎朝計る体重に、その日までのあなたの行いがすべて表現されています。
そのとき、「あーよかった」と思うか、「うわー」と叫んで反省するか。いずれにせよ、朝いちばんに体重を計ることで、いやが応にもいまの自分と対峠することになります。
私自身、毎日体重を計っていて、感じることがたくさんありました。たとえば、お酒を飲むと必ず次の日の朝、1000~1300 g体重が増えます。私がまだ自分の腎臓だけで生活していた頃も、この1000~1300 gをもとに戻すのに1週間かかりました。一晩であっという間に、1 ~2週間の努力が水の泡になってしまいます。するとばかばかしくなって、お酒を飲むのも慎重にならざるを得ません。
同様に朝、自分の現実と対峠すると、その日1日の食べ物にも変化が出てきます。前の日より800 g増えてしまった日の午後、知り合いがお菓子を持ってきても、素直に食べようという気分にはならないでしょう。
毎朝、自分の現実と対峠して、自分の目指す健康の姿をイメージする。あたりまえのことですが、この繰り返しを1週間、1ケ月、1年と続けた先に、望みどおりの健康な自分の体が実現するのだと思います。
どんな体重計がよいか? 100 g刻みのデジタル計です。
「体重計なんてどれも同じ」と、みなさんは考えているかもしれません。しかしもし本気で健康管理をしたいと考えるのなら、体重計はデジタルにしてください。100 g刻みで計れるものです。
おおよその体重しか計れない、バネばかりの体重計はおすすめできません。ビヨヨヨーンと針が前後して、「あー、だいたいこのくらい」なんてことを言っていては、体の変化がつかめないからです。
減量に成功する重要なポイントは、自分の体の変化を知り、それに喜びを感じることです。
本気で毎日野菜から食べて、おやつやお酒などを控えて体重を計っていると、最初の1週間は簡単にキロ単位で減量していきます。私なんか、2週間で一気に14kgも減りました。こうなるともう、毎日体重計に乗るのが楽しくてしかたありません。
楽しい境地までくれば、ほとんどダイエットに成功したとい言って滝過言ではありません。ダイエットに成功したとき、人から、「よくがんばりましたね」とか、「心が強いですね」などと言われました。とんでもありません。心が強かったら、140kgになるまでだらしなく食べたりしません。
こんな私でもなぜうまくいったのかというと、単純に楽しかったからです。そして楽しいと感じるには、100 g刻みで体の変化を知る必要があるのです。かつては、寝る前に飲酒をしたり、カップラーメンを食べたりしていました。ところが、体重を計り始めて、あることに気づきました。寝る前にお腹がすいた気がしていたり、お腹がすいたらいやだなーという気持ちでつい食べていましたが、本当にお腹がすいて食べていることは、実は少なかったのです。
お酒にしてもそうです。お酒を飲まないと眠れないと思い込んで、お酒を飲んでいました。ところが実際にお酒をやめてみると、飲まなくても眠れました。
何日も何日もダイエットを続けていくと、「今日も眠れる」ということが確実な自信になってきます。そしてある日、夜寝る前に、本当にお腹がすいている自分に気づく日があります。そのとき感じるのです。
このまま寝たら、明日にはもっと体重が減っているだろうな?!」
一種の快感をともなって、「うふふ」という気分になります。ある意味、「ダイエッターズハイ」と呼んでいいのか、食べないことへの快感が生まれてくるのです。
こうなったら、あとは一直線です。体重がまったく減らない時期を何度も迎えて、そのたびに「あーまた倹約モード、早くまた減り始めないかな?」と、現在の減量が確実に成功していることを実感しながら、まるで小中学生がゲーム機にはまったような状態でダイエットが進みます。
そうこうしているうちに「なーんだ。食べなくてもけっこう平気なんだな」という気持ちになって、どんどん体重が減っていくのです。つまり、不安感にさいなまれてムダなものを食べていた過去の自分に気づきます。
このゲーム感覚を確実に味わうためにも、体重計は100 g刻みのデジタルにしてください。
体重計をどこに置くか?いつでも通るところに!
みなさんのお宅に、体重計はありますか? あるとすればどこに置いてありますか。多くの人が「お風呂場の脱衣所」だと答えるでしょう。私の家はどうかというと、居間の片すみに邪魔にならないように置いてあります。
なぜ居間の片すみか。大事なことは、家族の動線です。物事を習慣化するのには、この動線がけっこう大事なのです。「がんばらなくてもそこを通る」「エイッと根性を出さなくても、そこにある」
体重計も、そういう動線上にあることが大事です。朝起きておしっこのあと、お風呂場の脱衣所で歯を磨く人なら、体重計はそこでもよいかもしれません。しかし、1つだけ欠点があります。冬の朝の脱衣所はとても寒い。ですから私の家では、体重計は居間の入り口のわきにあります。私も女房も朝いちばん、いつもの姿(私はパンツ1枚、女房はパジャマ)で体重を計ります。
子どもたちも居間に入ってくるなり、「ハイ体重!」と声をかけると、さっさと体重を計ります。
診療所の体重計は診察室の前にあります。診察室の前には体重計と血圧計が置いてあり、来院者は全員体重と血圧を計ります。
ここはトイレに向かう動線の上にもあたり、スタッフは出勤するとすぐにトイレに入り、とってかえして体重を計ります。そして、体重計のすぐ上の壁に貼ってあるカレンダーにその日の体重を記録します。
近所の保健センターも同様です。入り口の下駄箱の横に体重計とカレンダーがあり、職員は朝センターに出勤するとまずトイレに行きます。荷物やコートを下駄箱に置いて、靴をしまうと体重計に乗ります。そして体重測定に協力している人は、その日の体重をカレンダーに記録します。
このようにして、1日の生活の中でスムーズに体重が計れる環境をつくるのです。ほんの少し努力をしなければできないことは、実はものすごく努力しないと続きません。そこを通らないと仕事に行けないとか、そこを通らないとトイレに行けない、あるいはトイレから出たら体重計があった、くらいの日常の動線を利用しないと、人間はなかなか行動を習慣化できません。
私は、現在体重を85~87 kgに維持しています。減量を始めて7年目。90 kgを超えることなく体重を維持している最大のポイントは、この無理のない毎朝の体重測定です。毎晩行っているAPD(腹膜透析) の評価も、実は毎日のこの体重変化が大きな目安になっています。
あなたの家で、みんなが必ずいる部屋はどこでしょう。そこに100 g刻みのデジタル体重計を置き、壁にはカレンダーとボールペンをを吊ります。この環境整備が、体重を指標とする健康管理の第一歩です。
もしあなたが朝体重を計ることを習慣化したら、夜も計ってください。朝と夜体重を計る。これを習慣化すると、さまざまなことが見えてきます。
朝と夜の体重には、必ずといってよいほど差があります。これは、体重を計っているほとんどの人が経験します。
過去の研究で、基礎代謝が1600 kcalの人では朝と夜の体重に1000 g の差が出る、という報告があります。朝より夜のほうが、1000 g体重が多い。基礎代謝が1600 kcalというと、体重 60kgの中年男性、女性なら育児を始めたばかりのお母さんでしょうか。
朝と夜の体重を比較していると、面白いことに気がつきます。体重が順調に減っているときは、朝と夜の体重差がいつも1000 gくらいというようにだいたい一定しています。
ところが、ある日突然体重が減らなくなると、朝夜の体重差も少なくなってきます。いつも1000 g の差のある人が、700~8000 g程度しか差が出なくなるのです。全員が全員とは言いませんが、この体重の減らない、朝夜の差が小さくなる時期は2 週間ぐらい続きます。いつ頃起きるかというと、ダイエットを始めて1ヶ月目くらいの人が多いようです。ただし、体重が減っている人には起こりません。
もうおわかりですね。食べていないのに体重が落ちないストレスフルの時期。いわゆる「停滞期」で、おそらく基礎代謝も落ちている時期です。ダイエットをしていて、いちばんイライラする時期です。
でも、真剣にダイエットをしているのに体重が減らなくなったら、ぜひ思い出してください。
「あなたのダイエットは、うまくいっています」なぜなら、停滞期は、あなたが昔より少ないカロリーで生活しているために、体が自動的に倹約モードに入ったと思われる時期だからです。体に入るカロリーが本当に落ちていないと、この現象は起こりません。
ダイエットを試みる人が、挫折するのもこの時期です。10日以上も体重が減らなくなってイライラと焦ります。ですからつい、「このくらいの体重で維持しょうか」と、食べるものを増やしたり、運動を怠けたりしがちなのです。倹約モードのときに摂取カロリーが増えたり、運動量が減ったりしたら何が起こるでしょうか。
リバウンドです。では、いつ食事量を少し増やすか。じっと停滞期が過ぎるのを待って、再び体重が減り始めてから3 ~7日くらい、体重が減っているのを確認してください。それからなら、食事量を多少増やしても、驚くようなリバウンドは避けられると思います。
糖尿病でこれが効いた!というものです。糖尿病の方が自信をもってすすめるものです。